<改正電帳法対応>低コストで簡単 電子取引データ保存方法

2022.06.22 公開

2022年1月1日から改正電子帳簿保存法が施行され、国税関係の帳簿書類のデータ保存について大きく見直されました。 今回の改正は業務負担の軽減が目的とされていますが、電子取引情報に関してはデータでの保存が義務化され全ての企業・個人事業主が対応すべき課題となっています。 本記事では、電子帳簿保存法について改正点の要点と、事業規模に応じた具体的な対応方法を解説します。

電子帳簿保存法とは

電子帳簿保存法(以下、電帳法)は、法律で保存が義務付けられている帳簿・書類を電磁的記録(以下、電子データ)で保存することを認め、そのルールを定めた法律です。
従来、帳簿や書類は原則として紙で保存することが義務付けられていましたが、紙での保存にはファイリングや整理の手間、保管場所などの負担が大きく非効率と言わざるを得ません。
こうした課題から業務の効率化を図るため1998年に電帳法が成立し、その後度々見直しと改正が行われてきました。

電帳法が成立したことで電子データ保存も認められるようになったものの、これまでは保存要件(ルール)が厳しく広く普及するに至っていませんでした。
今回の改正が大きな注目を集めている理由として、一つはスキャナ保存要件の緩和、 もう一つは電子取引情報のデータ保存の義務化が挙げられます。

そもそもスキャナ保存とは?電子取引情報とは?
まずは電帳法の大枠を知り、何をどうすれば良いのか考えていきましょう。

2022年の改正点まとめ

電帳法では、国税関係帳簿国税関係書類電子取引の、3つに区分されています。
この分類ごとに「保存要件」が定められており、要件を満たした状態での電子データ保存が認められています。
これまではこの要件が厳しく、なかなか導入の進まない事業者が多くありました。

2022年の改正では、電子帳簿等保存・スキャナ保存の要件が大きく見直され緩和されたことでいよいよ電子データ保存が現実的な選択肢になってきました。
一方、電子取引に関しては紙での保存が禁止になり電子データでの保存が義務化されたことで企業はもちろん個人事業主などの全事業者が対応を迫られています。

改正電子帳簿保存法概要

1.国税関係帳簿・国税関係書類の要件緩和

>>事前承認制度の廃止

従来は、国税関係帳簿・書類の電子データ保存・スキャナ保存を行う場合は、原則3か月前までに税務署長などへ申請し承認を得る必要がありました。
この事前承認制度が廃止され、改正後はこの手続きが不要になります。

>>システム要件の緩和

従来は帳簿・書類の電子データ保存を行うシステムの要件が非常に細かく定められおり、これが導入の妨げにもなっていました。
このシステム要件が緩和され、最低3つの要件を満たしていれば電子データでの保存が認められることになりました。
要件は、以下3点です。

1.システム概要を記載した仕様書・説明書などを備え付けること
2.いつでも出力できるようディスプレイやプリンタ及びその操作マニュアルを備え付けること
3.税務職員に求められたときにすぐダウンロードできるようにしておくこと
>>検索要件の緩和

帳簿・書類のデータ保存において可視性を確保するために求められるのが「検索性」です。
保存しているデータの中から目的のファイルを速やかに検索できるようにしておいてくださいね、ということです。
従来はこの検索要件の項目も細かく定められていましたが、今後は「日付」「取引金額」「取引先」の3つに限定されます。

2.スキャナ保存の要件緩和

>>適正事務処理要件の廃止

これまでは不正防止の観点から「社内規程の整備」「相互けん制」「定期的な検査」などが必要でした。
この適正事務処理規定が全面的に廃止されたことで、定期検査で必要だった紙の原本が必要なくなり、改正後はスキャン後すぐに原本破棄することが可能になります。
相互けん制も廃止されますので、事務処理を1名で対応することが認められます。

>>タイムスタンプ要件の緩和

スキャナ保存では、これまでは「受領者が自署」した上で「3営業日以内にタイムスタンプ付与」が必要でしたが、 今後は受領者の自署が不要になり「最長約2ヶ月と概ね7営業日以内にタイムスタンプ付与」に緩和されます。
更に、スキャンして電子化したデータを「訂正または削除した事実やその内容を確認できるシステム」または、 一度保存したデータを「訂正または削除できないシステム」を使用する場合にはタイムスタンプ自体も不要となります。

3.電子取引における電子データ保存の義務化

これまでは、電子取引書類の保存はプリントアウトして紙で保存することが認められていましたが、改正後は紙保存は禁止となり、全ての事業者に対して電子データでの保存が義務化されます。
電子取引とは、EDI取引やクラウド経由の取引はもちろん、WEB請求書発行システムで出力したもの、メールで授受したPDF形式などの見積書/注文書/請求書なども該当します。
紙ベースで授受した取引書類以外は全て電子取引と考えて差し支えないでしょう。

このように電子的にやりとりした取引書類を、今後は紙でなく電子データ保存しなければならなくなります。

電子取引のデータ保存についても要件が定められており、要件を満たした形で保存する必要があります。
この要件をどのように満たすかが、今回の改正で多くの事業者の頭を悩ませている核心部でもあります。

電子取引の要件は、本物であることを証明できる「真実性の確保」と、誰でも視認できる「可視性の確保」が求められます。
詳しい要件は以下の通りです。

>>可視性の確保

次の全てを満たしていること

1.システム概要を記載した仕様書・説明書などを備え付けること
2.いつでも出力できるようディスプレイやプリンタ及びその操作マニュアルを備え付けること
3.「日付」「取引金額」「取引先」で検索できるようにしておくこと
>>真実性の確保

次のうちいずれかに対応すること

1.相手先がタイムスタンプを付与した書類を受領する
2.受領した書類にタイムスタンプを付与する
3.訂正削除の記録が残る又は、訂正削除ができないシステムを利用する
4.訂正削除の防止に関する事務処理規定の備え付け

4.罰則の強化

スキャナ保存の事前承認制度の廃止や保存要件が大幅に緩和された代わりに、不正があった場合の罰則が強化されます。
電子データに隠ぺい・改ざん、申告漏れがあった場合には重加算税10%が加重されます。
また、電子取引についてもスキャナ保存と同様の罰則が設けられています。

事業者が検討すべきは2点

ここまで改正点をざっと紹介しました。
では、実際事業者は何をどうすれば良いのでしょうか。
とりあえずは「スキャナ保存」と「電子取引」の2点に絞って検討すると良いでしょう。

1.スキャナ保存に対応するかどうか

スキャナ保存とは、自己発行した紙書類の写し(控え)または相手先から受領した紙書類をスキャナーなどで電子データに変換して保存すること。 対象になるのは、紙で授受した重要書類(契約書/領収書/請求書/納品書等)や一般書類(見積書/注文書等)といった証憑書類です。

このスキャナ保存の要件が現実的に満たせる範囲に緩和されたので、これを機に検討してみるのも良いでしょう。
ただ、対応については今のところは任意とされているので、自社の状況と環境に合わせた対応をとるのが望ましいでしょう。
スキャナ保存要件の詳細は、国税庁WEBサイトで確認できます。
保存要件を満たしてスキャナ保存に対応するための2つの方法を紹介します。

>>タイムスタンプシステム・サービスの導入

データの「真実性の確保」にタイムスタンプを付与できるシステムの導入やサービスを利用する方法です。
タイムスタンプとは、電子データがその時刻に確実に存在していたこと(存在証明)と、その時刻以降改ざんされていないこと(非改ざん証明)を証明するための仕組みです。

タイムスタンプは、認定を受けた時刻認証局(TSA:Time-Stamping Authority)と呼ばれる事業者が提供する時刻認証サービスを利用することになるため、 タイムスタンプ付与機能のあるシステムまたはサービスを利用する必要があります。

この場合はタイムスタンプ付与後、ストレージへ保存する際に「日付」「取引金額」「取引先」での検索要件を満たす必要があります。

>>スキャナ保存対応システムやソフトウェア(サービス)の利用

スキャナ保存要件を満たしているシステムやソフトウェア(サービス)を利用する方法です。

公益社団法人日本文書情報マネジメント協会によって、電帳法の要件を満たしていると判断されたシステムに与えられる「JIIMA認証」制度があります。 JIIMA認証取得済のシステムを利用することで、法令に準拠して対応を行うことができます。
必ずしもJIIMA認証取得済システムを選択する必要はありませんが、電子データの不備が発生するリスクを考えるとより安心です。

また、改正後の要件では、スキャンして電子化したデータの保存に「訂正・削除の事実及び内容を確認できるクラウド」または、 「訂正又は削除を行うことができないクラウド」を使用する場合にはタイムスタンプ付与義務が免除ます。 こういった条件をクリアできるクラウドサービスを使用することで、タイムスタンプにかかる費用を削減することもできます。

2.電子取引情報のデータ保存をどうするか

スキャナ保存に対応する場合は、上記のシステムで電子取引の要件も満たせるので同様の保存方法で問題ありません。
問題は電子取引情報のデータ保存にのみ対応する場合、どういった形で要件を満たし対応すべきか。
出来るだけお金と手間を掛けずに対応する方法を考えてみましょう。

まずは電子取引の保存要件で「真実性の確保」をどうするかを先に検討すると良いでしょう。
真実性を確保するための要件は4つの選択肢があり、その中から一つ対応すればOKです。
それから「可視性の確保」の要件を満たす手段を検討すればスムーズです。

>>真実性の確保

4つの選択肢があり、どれか一つに対応します。

1.相手先がタイムスタンプを付与した書類を受領する

→これはハッキリ言って現実的でないと思われます。
 全ての相手先にタイムスタンプの付与をお願いするのは無理があるでしょう。

2.受領した書類にタイムスタンプを付与する

→タイムスタンプが付与できるシステムの導入またはサービスを利用するのであれば、スキャナ保存にも対応が可能です。
 予算をかけずに電帳法対応したい場合、義務化された電子取引のみ対応を検討することになるのでこの選択肢も保留となるでしょう。

3.訂正削除の記録が残る又は、訂正削除ができないシステムを利用する

→この場合も2と同様、システムの導入またはサービスの利用が必要です。
 この選択肢も保留となるでしょう。

4.訂正削除の防止に関する事務処理規定の備え付け

→これが最も現実的かつお金と手間を掛けない方法になります。
 事務処理規定のサンプルを国税庁WEBサイトよりDLすることができます。
 数ページほどの簡易的なもので、自社環境に合わせて作成できるので、時間をかけずに対応できるかと思います。
 ただしこの場合、データの改ざんはもちろん訂正・削除を防止するためのルールの徹底が大前提となります。
 従事者が複数になる場合は、やはりそれなりのシステム導入が望ましいかもしれません。
 参考資料(各種規程等のサンプル)│国税庁

>>可視性の確保

以下、全ての要件に対応しなくてはなりません。

1.システム概要を記載した仕様書・説明書などを備え付けること
2.いつでも出力できるようディスプレイやプリンタ及びその操作マニュアルを備え付けること
3.「日付」「取引金額」「取引先」で検索できるようにしておくこと

→1と2はさほど難しくはないでしょう。  問題は検索要件ではないでしょうか。
 保存したデータを「日付」「取引金額」「取引先」で検索できるようにしておく必要があります。
 検索要件に対応するための3つの方法を紹介します。

<1>検索要件に対応したシステムの利用
3つの検索項目(日付・金額・取引先)の入力さえクリアできればOKで、最も手っ取り早いですがいくらかの費用がかかります。
ここでシステム利用を検討するなら改正電帳法対応のシステムを選択するのが効率的で、真実性の確保もクリアできるはずです。
ある程度の規模の場合は、システムを利用してスキャナ保存・電子取引情報の保存要件を一気にクリアするのも手です。

<2>ダウンロード可能な状態にしてファイル名で運用する
データをダウンロードできる環境のストレージを用意し、ファイル名に日付・金額・取引先を入れることで検索性を確保できます。
毎日膨大なファイルが生成される場合は現実的でないですが、ある程度までならこちらが一番オススメです。
手作業でファイル名を付けていくのが大変な場合、電帳法対応のためのファイルリネーム用アプリケーションがあるので後程紹介します。
例)20220401_(株)ABCエンジニアリング_126000.pdf

<3>索引簿を作成し検索に対応する
Excelなどで索引簿を作成し、ファイルと関連付けして検索に対応する方法です。
ファイルを扱う人が複数存在する場合は少し難しいかもしれません。

バックアップの必要性

電帳法では、保存したデータのバックアップに関しては要件に含まれていません。
ですが国税庁が公開している電帳法に関する一問一答では、データのバックアップについて要件には含まれないとしつつも、 「電磁的記録は大量消滅に対する危険性が高く、バックアップデータを保存することが望まれる」と、バックアップの重要性を説明しています。

特に改正後のスキャナ保存において「適正事務処理要件の廃止」で紙の原本はすぐに破棄できるようになりました。
ということは、電子データのバックアップを取っていなかった場合、万が一データが消失した際は対応のしようがありません。
データ消失のリスクはシステム障害や人的ミスの他、最近猛威を奮っているランサムウェアなどのマルウェアなど多岐にわたりますので、 オリジナルデータの他に、必ずバックアップデータを作成しておくことを強くおすすめします。

事業規模別対応方法

最後に、電子取引について事業規模に応じた具体的な対応方法を紹介します。

>>扱うファイルが多くない(個人事業主など)
手入力でファイル名を統一

書類を扱う人が限定的で運用ルールが徹底できることが条件ですが、
ひとまず全て手作業で対応するのも選択の一つです。
ファイル名に「日付」「取引先」「金額」を規則正しく含めることで、検索要件を満たすことができます。
ただしこの場合、例えば「日付のフォーマット」「英数記号の全角/半角」など表記ゆれが発生すると正しく検索できませんので、 必ず表記ルールの徹底をする必要があります。

検索性確保 手入力でファイル名を統一する
真実性確保 事務処理規定で対応する
保存先 パソコンや外付のストレージ
データのバックアップ先 RDX
>>毎日数十件以上の取引がある(小規模事業者)
命名くんでファイル名を統一

こちらも書類を扱う人が限定的で運用ルールが徹底できることが条件ですが、
扱う書類が手作業では追いつかない場合に、ファイルリネーム用アプリケーションが便利です。
例えばここで紹介している「命名くん」は予め取引先の登録をしておくので、リネームの際は取引先をマウスで選択するだけ。
会社名の表記ゆれを排除できるので、面倒なリネーム作業を単純化することが可能です。

検索性確保 ファイルリネーム用アプリケーション「命名くん」を使用し、ファイル名を統一する
真実性確保 事務処理規定で対応する
保存先 Blu-ray/NASなど
データのバックアップ先 RDX
>>毎日膨大な取引がある/部署・人員が多い(中規模事業者〜)
命名くんでファイル名を統一/タイムスタンプで真実性を確保

書類を扱う担当者が一定数以上いて運用ルールの徹底が難しい場合、
ファイルリネーム用アプリケーションに加えて、タイムスタンプを付与できるシステムを導入すると良いでしょう。
例えばここで紹介しているタイムスタンプ付与システム「APX2-EVID/5P」では、予め設定した「署名フォルダ」にファイルを入れるだけで 自動で検知→タイムスタンプの付与→「出力フォルダ」へ保存されます。
あとはタイムスタンプの付与されたファイルを管理・バックアップするだけなので非常に効率的です。

検索性確保 ファイルリネーム用アプリケーション「命名くん」を使用し、ファイル名を統一する
真実性確保 タイムスタンプ付与システムを導入
保存先 タイムスタンプ付与システム→NASなど
データのバックアップ先 RDX

ファイルリネーム用アプリケーション「命名くん」

ファイルリネーム用アプリケーション「命名くん」
電帳法のメンドクサイをパパっと解決!

改正電子帳簿保存法で義務づけられた可視性の検索要件を満たすための手段として、 取引情報であるPDFファイルの名前を検索しやすいように一定のルールに則って変更するといった方法があります。
「命名くん」は、このようなファイル名の変更作業の負担を軽減するためのファイルリネーム機能と、Blu-rayへの書き込み機能を搭載した電子帳簿保存法対応アプリケーションです。

弊社では、データのバックアップに最適な「RDX」のドライブとセットもご用意しております。

タイムスタンプ付与システム「APX2-EVID/5P」

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RDXの接続図と使用方法

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接続はUSBなので、つなげるだけでリムーバブルディスクとして認識され、誰でも簡単にご使用可能です。
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この一冊でRDXのことがまるっとわかる「rdx Book」PDF版をダウンロードしていただけます。
導入をご検討のお客様はもちろん、提案資料としても是非ご活用ください。
冊子版をご希望の場合はお問い合わせください。

RDX資料「rdx Book」

発行元:タンベルグデータ株式会社

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